惜別→放置→再会→そして復活

仕事先に向かう途中、泣く泣く道端に置いていった我が自転車、半日を経過してようやく再会することが出来た。
昼間にネットで調べたところ自転車を置いといた場所の近くに自転車屋があることを発見し、仕事の帰りにそこへ連れて行くことに。

携帯のGPSを頼りに自転車屋に近づくも、それらしき灯りは全く見えてこない。
携帯はすぐ左手の家が目的地だと知らせてくれるのだが、店の明かりというものは一切無くて住宅地の薄暗さがあるのみである。
正面に回りその建物を眺めてみるがどう見ても普通の一軒家なのだ。
しかし、その家のインターホンに「自転車の修理お受けします。御用の方はインターホンを鳴らして下さい」と書いてあるのを発見したので、他に当てがあるわけでもない私はインターホンを鳴らして目的を告げた。
返答はインターホンからではなく、その一軒家の2Fの窓から逆光で浮かび上がったオッサンの口から発せられたのである。

この時点でちょっと帰りたくなった。

一分ほどすると2Fから50歳代半ばと思われる太ったオッサンが道具を抱えて降りてきて、おもむろに家の小さな門にライトを設置し始めたのである。
おいこら、ちょっと待て!修理用のガレージとかあるんじゃないのか!まさかここで修理を……
もちろん私の推測は的中し、普通の家の前、住宅街の小道での自転車の修理が始まってしまった。

オッサンは「パンクしたのはどっち?」「自転車はどこに止めてたの?」「昼間には来られない?」「どこまで帰るの?」など、なぜか色々とこっちに質問してくる。
良識派の私は当然それらの質問に一つ一つ答えるのであるが、別に和気藹々とした会話を交わしているわけでなく、ポツリポツリといった程度だ。
もしかしてこれは自転車屋ではなく、定年退職したどこぞのオッサンが単に趣味で自転車修理を請け負っているだけなのでは?と思えてきたのは言うまでもない。
この時点でかなりの失敗感が私を襲っていた。

「もしかしてこれはボッタクリ自転車屋?」との疑念すら抱きはじめていた私であったが、オッサンの顔に笑顔が出てき始め、冗談なども交えたトークに移ってくれたおかげでようやく安心して修理の様子を見ることが出来るようになったのだ。
パンクの原因はガラスの破片が刺さっていたせいであり、パンク修理も無事に完了。
さらにブレーキや変速ギアの調子も無料で見てくれたりして、結局はかなり良い自転車屋と言っても良いくらいの対応だったのである。

オッサン、ありがとう!あんた、素晴らしい自転車屋だよ!店舗を構えていなくたってそんなこと関係ないぜ!
そんなことを思いつつ、以前よりも快調になった我が愛機で帰途に着いたのだった。
でも、でもねオッサン、パンク修理をしてた1時間中、ずっとオッサンの話し相手をした俺も結構疲れたんだよ……

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