ヤモリ

昼間、洗濯を終えてベランダに干そうと網戸を開けた時、足元に何かがポトッと落ちてきた。
ビビリながら見てみるとヤモリであった。
網戸の外側に貼り付いていたものが、網戸を開けられたショックで落ちてきたのだろう。

やばい、部屋の中に着地した……そう思った瞬間ヤツは素晴らしいダッシュをかまし、窓の枠沿いに家具の隙間へと走り去っていった。
「……お、おい、ちょっと待て!俺にヤモリと同居する趣味はないんだぁっ!」
そう心の中で叫んでみたが、俺をあざ笑うかのようにとっくに姿をくらまし、俺一人だけが部屋に残されてしまったのである。
漆黒のスピードスター、ゴキブリに関しては手も足も出ない俺だが、ヤモリだったらまだマシだ。
最悪、手でつかんで外に放り出すくらいなら何とかいける。

だからとりあえず姿を見せろ!

見せてくれ!

いや、見せてください……

どこかにいないかと懐中電灯を片手に色々と探索したが、着地から数時間経過した今もヤツの姿は全く見つからない。
この狭い部屋の一体どこに潜んでいるというのか。
このままヤモリに脅えながら夜を過ごし、またいきなりヤツと対面してビックリしなければいけないのか。
できれば夜中トイレに向かうとき、フラフラ散歩しているヤモリを踏んでしまうような事態にならないことを祈るしかない……

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